ヘリウム3(He3)は、将来において核融合炉で使用できる可能性がある気体である。地球上ではヘリウム3の量は限られている。しかし、月面には多大なヘリウム3が埋蔵すると考えられている。
現在使われている核分裂反応による原子力発電所とは異なって、核融合炉では核融合反応を利用する。現在の核融合炉では、水素の同位体であるトリチウム(三重水素)と、重水素とを用いて、その核が核融合反応によってヘリウムと中性子を発生するエネルギーを使用する。これは太陽のエネルギー源と同じであり、現在の核分裂反応による原子力発電所が生成するような核廃棄物を出さない。しかしながら、トリチウムと重水素による核融合炉にはエネルギーロスや制御の難しさという難点がある。
これに対して、ヘリウム3と重水素の核反応はヘリウムと陽子を発生する。エネルギー損失が少ないこと、制御しやすいこと、そして中性子が発生しないという利点がある。陽子を直接電気に変換できるため(液体を沸騰させてタービンを駆動する必要がない)、70%程の変換効率が可能だろうと期待されている。
太陽からの太陽風で運ばれていくるヘリウム3は、地球の場合は大気に遮られて漂着しないが、月面には大気が無いので1, 100, 000トンものヘリウム3が月面上に埋蔵していると推測されている。月のホコリを月面上で約600度ほど熱することでヘリウム3を抽出して地球に持ち帰れば、核融合炉に使えるという目論見である。
残念ながら、いまのところは机上の理論にとどまっており、実現するには早くても40年はかかるだろうとの事。